2015年9月21日月曜日

活版印刷の展示イベント

「Let's 豪農の館」
どーんとすごいインパクトの文字です。笑

これは10月に開催される朗文堂さん主催の、活版印刷のイベントのDMです。
その名のとおり、開催場所は、新潟市の歴史ある豪農の館「北方文化博物館」です。




東京の朗文堂さんは、タイポグラフィー関連書の出版社でありながら、世界的にもめずらしい活版印刷機の製造販売もされています。わたしも活版印刷機導入にあたって、いろいろとお世話になっています。

今回、偶然にも新潟でイベントをされるということで、わたしも地元作家として出展させていただくことになりました。
新潟の他の作家さんは、イラストレーターのしおたまこさん。そして和紙をつくられている紙漉サトウ工房さんです。

活版印刷機をつかったいろんな技法とか、印刷、版画のおもしろい組み合わせとかも見れるとおもいます。
全国の活版印刷による印刷物が展示されるので、活版印刷にご興味のある方はぜひお越し下さい。



Viva la 活版 Let’s 豪農の館

2015年10月10日[土]-12日[月・祝] 09:00-17:00
会場:「北方文化博物館 豪農の館」 内 「吉ヶ平古民家」(登録有形文化財)
新潟市江南区沢海 2丁目15-25
主催:朗文堂  アダナ・プレス倶楽部

イベントの詳細はこちら


わたしは、この秋から販売予定の新作のものを展示します。
これは試作用につくってもらった活版印刷用の樹脂凸版。


樹脂版のはじめての試し刷り。


うっすら白の版も重ねています。インクの色味は、まだまだ調整が必要。

これは、11月に京都にオープンする書店、誠光社さんと一緒につくっているオリジナルのポストカードのイラスト部分です。
 

誠光社は、京都の恵文社一乗寺店の元店長、堀部篤史さんが独立して立ち上げる、あたらしい本屋さんです。わたしも長らくお世話になってきた恵文社&堀部さん。
そのことはまた別の記事でしっかりご紹介させていただきます。


11月には、恵文社さんで本と紅茶のイベントも開催予定です。
ようやく紅茶用のパッケージの絵も決まりました。

5種類の二つ折りカードも、絵ができあがりました。
いまは、和紙の漉き上がりと、製版待ちです。

来週から印刷に入れたら、と思っています。

この秋の新作全部、活版印刷を使うので、今度の展示で展示します。


新作のことはまた別の機会にくわしくお知らせします。


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Viva la 活版 Let’s 豪農の館

2015年10月10日[土]-12日[月・祝] 09:00-17:00
会場:「北方文化博物館 豪農の館」 内 「吉ヶ平古民家」(登録有形文化財)
新潟市江南区沢海 2丁目15-25
主催:朗文堂  アダナ・プレス倶楽部
イベントの詳細はこちら


「tea&books 恵文社のフランス紅茶」店内フェア

期間:2015年11月21日~12月25日
会場:恵文社一乗寺店 生活館
住所:京都市左京区一乗寺払殿町10
http://www.keibunsha-store.com




2015年9月10日木曜日

家とアトリエができるまで。その1

家とアトリエを、この秋から建て替えることになりました。

新潟に移り住んで、ちょうど4年。
夫の両親から借り暮らしさせてもらっていた家を、自分たちの家としてずっと住まわせてもらえることになり、最初はリフォームを検討していましたが、一番いい形を考えると、建て替えることになりました。

一番の理由は、冬の寒さ。

全然暖まらない上に、光熱費もすごくかかるし、結露もひどい…。

リフォームでしっかり気密性を上げるには、建て替えとほぼ変わらない費用がかかってきてしまう、ということだったのです。

中途半端にすこし直しても、いずれすこしずつ補修は必要になります。

京都の祖母の家も、母がアトリエにつかっている京町家も、古く昔ながらの建物で、わたしは大好きなのですが、でもそこを使い続けるメンテナンスの大変さも身にしみて感じるようになり、じゃあ自分の家はどうしよう、といろいろ考えるようになりました。


そして自分の仕事場について。

版画などの印刷機材がたくさんあって、設備面でしっかりさせないと、とても作業効率が悪いこと。
特にシルクスクリーンの製版作業は水場や暗室が必要で、いまは古いお風呂場を使ってやっていますが、もはや限界です。笑
 

アトリエを外で借りるより、自宅に専用スペースを設けるということで、住居スペースと仕事スペースの一番ベストな形を、設計して作ってもらうことにしました。

もっと早くお知らせする予定が遅くなってしまいました。




作っていただくのはオーガニックスタジオ新潟さん。
これは事務所の外観。
限られた予算の中、ギリギリまでわがままを聞いていただいています…。笑

家のだいたいの設計は決まり、あとはアトリエの内装について相談中です。


こないだ、内装に使う建具を探しに行ってきました。
いつもお世話になっている古道具ハチミツさんにて。

設計担当してくださる山下さんと、現場監督の担当の波潟さんも一緒に見にきてもらいました。この窓は、アトリエに使う予定です。



これはアトリエの入り口につかうドア。

ドアは開き方を逆にした方がいいそうで、蝶番とノブの金具を建具屋さんに調整してもらうことになりました。


ハチミツのおじさんがストリートオルガン鳴らしてくれました。
この日一緒にいた息子はかなり気に入って、家でも真似してました。





オーガニックスタジオ新潟のモデルハウスの一角を工房としてつかっているナナカマドの後藤奈々さんの器。

手洗いの鉢を作ってもらうことにしました。

形のイメージは左の器のように、ふちがゆるやかに。
もっと中の円は大きく。
どんなふうになるか楽しみです。


設計担当してくださる山下さんと小林さんコンビ。真ん中は経理の高橋さん。
この日、お届けものをしに、事務所にいくとBBQパーティをやっていました。
お昼ごはんみんなでBBQなんて欧米か…!




サーロイン!笑
これ、生肉手づかみに見えますが、密封されてます。
肉食っていきますか?というお言葉に甘えさせていただいて、ちゃっかり便乗。

社長の相模さん。みんなもう食べ終わっていたのに、また焼いてもらいました。
みんなのお肉を焼くのは相模さんの仕事だそうです。


なんて優雅な…と思ったら、小林さんのお誕生日会でした。
しかもこの豪華な和牛は、社員の安部さんのおごりだったそうです。経費ではないですよとのこと。(参照はこちら)

いますごくお忙しい時期のようで、(これはけっこう前の話ですが)楽しんだら、みんなさーっと仕事に戻られる様子は見事でした。

じつはこの日、ワインのラベルをお届けに行っていました。
契約されたお客さんに渡す、オリジナルの記念品のワイン。
新潟のワイナリー、ドメーヌ・ショオさんの赤ワインなんですけど、ものすごく美味しいです。

わたしがシルクスクリーン印刷で、ラベルを作らせていただきました。



 二次露光中の版。



印刷のインクは、独自につくった日本画の顔料インク。
日本画に使う雲母(パール)を、膠でといて、使います。



刷ったばかりは発色しません。


乾くとこのとおり。
とても手間とコストがかかるので実用の機会のなかったこの刷り方。
日本画の顔料は、発色が独特で、和紙にすごく合うんです。


紙は、新潟の職人さんが作っている手漉き和紙。新潟産の楮だけをつかって作られていて、べんがらと柿渋で引き染めされている、こちらはすごく手間のかかった和紙です。


オーガニックスタジオさんは、家のふすまに同じ地域の新潟の手漉き和紙(しかも染め紙)や唐紙をつかったりする、とても丁寧な家作りをされる工務店です。

イラストは、横からみた事務所の外観をモチーフにしています。
建物の絵で、線をパソコンでトレースするとかちかちに堅くなるので、一応あえて、ゆるい手描きの線にしました。



ワインも柿渋染めの手漉き和紙も、経年変化で美しく年をとるもの。
家も、アトリエも、人間も、そうであれたらいいです。




活版印刷、準備中です

とうとうアトリエに活版印刷機がやってきました。
テキンと呼ばれる、卓上型の小型のアダナ式活版印刷機です。

タイプライターのような感覚で、愛好家に古くから愛されてきたそうです。


構造もものすごくシンプル。
電気もつかわず、手でハンドルをひいて印刷します。

活字以外でも凸版画の小型プレス機のような使い方もできるんです。
たとえば手彫りの木版だって使おうと思えば使えるんです。
活字を使った活版印刷も、木版画も消ゴムハンコも、みんな仕組みは同じ「 凸版」。

わたしは活字も使いますが、いろんな「 凸版」を組み込んでやっていけたらなぁとおもっています。



ここ数年どんどんポピュラーになってきた活版印刷ブームを見ながら、冷静をよそおってきた自分でしたが、やっぱり手をだしてしまいました…。


撮影するためとはいえ、ずっとシルクスクリーンの印刷機がのっていた台に、 活版印刷機を乗せ変えるだけで、なんかやましい気持ちになるのはなんでだろう…。


ちなみにこれがシルクスクリーンの印刷機。これも電気はつかわない手動のもの。
活版印刷機よりいっそうシンプルな仕組み。

そういえば写真とったことなかったことに気がついて、また申し訳ない気持ちになってしまいました。笑

もちろんこれからも変わらず大活躍してくれます!



印刷に使用する活字は欧文活字のバスカヴィル。
活字もまた、コレクター心をくすぐる危険な魅力をもっています…。


 活字をケースに振り分けるだけでかなり時間かかりました。地震でひっくり返ったら大変だ。

不慣れな手つきで試し刷りのために活字を拾いました。デジタルでの作業と全然違って、文字と文字の間の字間調整がすごく手間です。横に写っている金属製の込めものや、もっと微調整するためには紙を切って活字のすきまにはさんでいきます。

あんまりこだわりだしたら切りがないけど、とても重要な作業。そして難しいです。
大雑把な性格の自分には、一番不安な作業。

時間に余裕があるときは、うっとりするような作業なんですけど、納期がせまっている時とかは、手がふるえるとおもいます。


 活字を印刷機に取付けて、インクをつけて印刷します。

使用する草木染めの手漉き和紙に印字しました。
想像以上に和紙はやわらかくて、印圧の調整がむずかしいです。
インクののりもまばらだし、活字が食い込んでしまう。

紙に食い込まないように印刷するのが職人の腕の見せ所っていいますが、それがどれだけ難しいことか、ほんとよくわかりました。逆にこの凹んだ感じが、最近は活版印刷のチャームポイントとして人気があるので、なんかまあ、いいかな…なんて弱腰に…。



絵の方も、今度試し刷りします。

まだまだ技術的には大きく進歩しなさそうですが、活版刷りのもの、この秋から商品化する予定です。